プログラムノート 第1回 現代音楽祭 · Programme Notes · Vol. 01
Programme Notes · Vol. 01

第1回 現代音楽祭
プログラムノート

Date2026.3.27 Fri / 開場 16:30 / 開演 17:00 Venueあいれふホール(福岡市中央区舞鶴2-5-1) Admission入場無料 Hostギルド・ムジカ九州
Composer · 作曲家

寺島 敦

Atsushi Terashima
Programme Note

《組曲:MIDTOWN EAST》

#1 BLUES MIDTOWN EAST  ·   #2 CAT ON THE CORNER  ·   #3 HUDSON RIVER PARK

ジャズに教会旋法(グレゴリアンモード)を取り入れる手法は、1959年に発表されたマイルス・デイビスのアルバム『カインド・オブ・ブルー』により世に紹介され、後のモダンジャズに多大な影響を与えました。ビバップのスタイルによりコードが複雑に細分化される中、スケールを基にした流れで作られたテーマやアドリブのフレーズは、当時かなり斬新だったと思います。

組曲 MIDTOWN EAST の3曲は、いずれも12小節を一定のパターンで繰り返すブルース形式で作曲しています。一般的なブルースの曲のコード進行とは異なり、教会旋法のドリアンモードの響きを感じるマイナーセブンスのコードを中心に流れを組み立てており、私の感じるニューヨークの街の印象を表現しています。

Composer · 作曲家

米倉 豪志

Goushi Yonekura
Programme Note

《室内協奏曲「海」》

平家物語・壇ノ浦の戦いを下敷きとした作品です。

初めて関門海峡を訪れた際、そのあまりの無骨な景観になんとも言えない気持ちになったことを覚えています。運命に翻弄されるのに、なんと相応しい場所であるか。

室内合奏という編成を考えた際、各楽器がそれぞれ主役である音楽にしたいと考え、また、偉大な先人達に学びたいと考え、室内協奏曲という様式を選びました。

語り継がれる栄枯盛衰と、人の生き死にを意にも介さない、海・自然の姿を描いてみます。

1. 海

作品全体の印象を象徴する意味合いを持ち、「海」というタイトルをつけました。朝の光から始まり、復調性と無調性の間で混沌と救済の間を揺れ動き、最後は暗く深い海の底に沈んでいきます。小さなピアノコンチェルトの様相をもち、ピアニストに高度な要求をする作品となっています。

2. 小督(こごう)

高倉天皇に寵愛されたが、建礼門院徳子の嫉妬で宮中を去る小督。嵯峨野で源仲国が笛で「想夫恋」を奏でながら小督の奏でる琴の音を探る。フルートとピアノのダブルコンチェルト。

3. 祇園精舎

私が「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり〜」と話した声を録音したものを、自作アプリケーションを用いてフーリエ変換し、その倍音構造に AI を用いて色彩化したものを、最後に私が各楽器の譜面に書き起こすという手法で作曲されました。わずか数十秒のディベルティメント的性格を持つ間奏曲。

4. 壇ノ浦 - 海 II

壇ノ浦の無骨で無慈悲な印象、人間の野心と自然の無関心、生と死、混沌と救済。全ての楽器が独奏的に高度な技術を要する、室内協奏曲の名を体現する楽章です。

5. 月の光 - 海 III

月と血の夜の海。人間の儚い夢のあとに続く、無関心。

Composer · 作曲家

井財野 友人

Izaino Yujin
Programme Note · 1982年作曲

《美々津》

バッハやベートーヴェンがドイツ民謡をもって基礎としているなら、日本人の創作はまず日本民謡に基礎を置くべきだ ——— と中高生の頃は信じていました。が、それを実行するのはとてつもなく難しかったのです。この曲を構想したのは高校生でしたが、完成したのは二十歳。日本風に仕上げる事は全くできず、コープランドの手法が生々しく入ってしまいました。

東京藝術大学に「管弦楽法」と言う授業があり、作品を提出すると芸大オケ(学内に存在するプロオーケストラ)が初見で演奏してくれる機会が、年2回ありました。そこで、講師の黛敏郎先生の横に座って、一緒にスコアを見ながら、その初見演奏を聞いたのでした。

黛先生はかなり関心を持ってくださり「アイヴスはお好きですか」と尋ねてこられました。当時、アイヴスにはとても関心があったのですが、スコアも録音も近くの図書館には全くなく、目にするのは非常に困難。何も知らないのと同然だったのですが、始終雑多なものが詰め込まれている点が、アイヴスを想起させたのかもしれません。

曲は、「ドンタカター」と聞こえる主要主題、宮崎県民謡『ひえつき節』、『ばんば踊り』のサビの変形、の順で提示。少しの展開の後『ひえつき節』が再現、そして最後に『ばんば踊り』がサンバになって曲を閉じる、というラプソディックな構成です。

Programme Note · 2003年作曲

《博多人形師》

2003年「北九州音楽祭」に、地元グループのバイオリニストとして出演しましたが、その時に小品1曲作れないかという提案がありました。一方、母校である長崎西高校の吹奏楽部から、定期演奏会のために1曲作れないかという打診もありました。さらに1999年から、井財野=原田は「博多『楽』」と言う会に属し、5周年にはアクロス福岡で「能楽とオーケストラを組み合わせて新しい作品を作って発表しよう」という構想もありました。そのすべてをこの1曲でまかなったため、ピアノ五重奏版、吹奏楽版、管弦楽版ができた訳です。その後もロシアで演奏するための拡大管弦楽版があり、今度は五つ目の版になります。

博多地区においてお祝いの席でよく歌われる《博多祝い歌(祝いめでた)》の中に「エーイーショウエ」という掛け声があります。そのモチーフを随所に引用し、博多の町の賑々しい雰囲気と、対照的に静謐な世界を描いた楽曲です。

題名は、作ろうとしていた創作能のタイトルだったのですが、そちらの台本が何度も変わったため、最終的に創作能からは人形師が消えてしまいました。

Programme Note · 2009年作曲

《渡海鳴響》

朝鮮民謡《トラジ》に、日本の楽曲《越天楽》《故郷》を織り込んだ楽曲です。釜山教育大学校と福岡教育大学管弦楽団が共演する可能性を見越して作ったため、技術的には平易にできております。残念ながらそれは実現しませんでしたが、《トラジ》と《故郷》を同時に演奏すると、それなりに何とかなってしまうというのはちょっとした発見で、我ながら興味深い体験ができたことはメリットでした。ちなみに韓国語の題名は「トヘミョンヒャン」、略して「トヘ」と呼んでいたものです。

今回、作曲時期の違う3曲を並べてみると、改めて自分の方法が見えてきたのも発見です。

高校の時に読んだロマン・ロランの著作に「どんな新作でも、どこかに聞き馴染みのある部分が残っていなければならない」という文がありました(多分、読破できなかった『ジャン・クリストフ』)。この文は筆者の哲学と化しているのかもしれません。

そして、4度進行と2度進行の組み合わせの旋律、動機。「3度は非日本的」と筆者の感性は訴えてくるのです。これと三和音をどのように馴染ませるかが、筆者の一生の課題のように思えてきました。この機会に加わってくださった皆様へ、深い感謝を捧げる次第です。

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